すっきり数学 - 事後確率

 このページはモンティホール問題を含む事後確率について記載しています。

 確率には大きく事前確率と事後確率があり、次のようになります。
  • 事前確率:事象が生じる前の時点での事象それぞれが起こると言える度合の比率を示しており未来の世界の推測である。
  • 事後確率:事象が生じた後の時点での事象それぞれが起こったと言える度合の比率を示しており現在の世界の推測である。事前確率を除く情報が無い場合は事前確率と一致し、情報が有る場合は情報によりありえない世界が排除されて残った世界の事前確率の比率となる。

 以下、情報により事後確率が変化する例を示します。


1枚のコイン

 1枚のコインを投げて片面が上方となったときの表裏どちらが上方であるかの事後確率。

表1.事前確率を除く情報が無い場合
事象事前確率事後確率
コインが表1/211/2
コインが裏1/211/2

表2.コインが表であるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
コインが表1/211
コインが裏1/2

2枚のコイン

 2枚のコインを投げたときの表裏の組み合わせの事後確率。

表1.事前確率を除く情報が無い場合
事象事前確率事後確率
コインが表と表コイン1が表かつコイン2が表1/411/4
コインが表と裏コイン1が表かつコイン2が裏1/421/2
コイン1が裏かつコイン2が表1/4
コインが裏と裏コイン1が裏かつコイン2が裏1/411/4

表2.コインが少なくとも1枚は表であるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
コインが表と表コイン1が表かつコイン2が表1/411/3
コインが表と裏コイン1が表かつコイン2が裏1/422/3
コイン1が裏かつコイン2が表1/4
コインが裏と裏コイン1が裏かつコイン2が裏1/4

2人の子ども

 2人の子どもの性別の組み合わせの事後確率。

表1.事前確率を除く情報が無い場合
事象事前確率事後確率
男の子と男の子第1子が男の子かつ第2子が男の子1/411/4
男の子と女の子第1子が男の子かつ第2子が女の子1/421/2
第1子が女の子かつ第2子が男の子1/4
女の子と女の子第1子が女の子かつ第2子が女の子1/411/4

表2.少なくとも1人は男の子であるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
男の子と男の子第1子が男の子かつ第2子が男の子1/411/3
男の子と女の子第1子が男の子かつ第2子が女の子1/422/3
第1子が女の子かつ第2子が男の子1/4
女の子と女の子第1子が女の子かつ第2子が女の子1/4

表3.第1子が男の子であるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
男の子と男の子第1子が男の子かつ第2子が男の子1/411/2
男の子と女の子第1子が男の子かつ第2子が女の子1/411/2
第1子が女の子かつ第2子が男の子1/4
女の子と女の子第1子が女の子かつ第2子が女の子1/4

表4.無作為に選んだ子どもが男の子であるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
男の子と男の子第1子が男の子かつ第2子が男の子男の子を選ぶ1/4x1=1/411/2
男の子と女の子第1子が男の子かつ第2子が女の子男の子を選ぶ1/4x1/2=1/811/2
女の子を選ぶ1/4x1/2=1/8
第1子が女の子かつ第2子が男の子男の子を選ぶ1/4x1/2=1/8
女の子を選ぶ1/4x1/2=1/8
女の子と女の子第1子が女の子かつ第2子が女の子女の子を選ぶ1/4x1=1/4

表5.出迎えた子どもが男の子であるという情報を取得した場合(どちらの子どもが出迎えるかの事前確率が1/2ずつ)
事象事前確率事後確率
男の子と男の子第1子が男の子かつ第2子が男の子男の子が出迎える1/4x1=1/411/2
男の子と女の子第1子が男の子かつ第2子が女の子男の子が出迎える1/4x1/2=1/811/2
女の子が出迎える1/4x1/2=1/8
第1子が女の子かつ第2子が男の子男の子が出迎える1/4x1/2=1/8
女の子が出迎える1/4x1/2=1/8
女の子と女の子第1子が女の子かつ第2子が女の子女の子が出迎える1/4x1=1/4

補足:二人の子供の確率の問題

モンティホール問題

 3つのドアがあり1つのドアが当たりで2つのドアがはずれであり、プレイヤーがドアを1つ選んでから司会者が他2つのドアの内のはずれのドアを1つ開く。司会者がドアを開いた後のそれぞれのドアが当たりの事後確率。3つのドアをドアA,B,Cとし、最初にプレイヤーがドアAを選択するものとする。

表1.事前確率を除く情報が無い場合(ドアA,B,Cが当たりの事前確率がそれぞれ1/3、最初にプレイヤーが選択したドアが当たりのときに司会者が他2つのドアを開ける事前確率がそれぞれ1/2)
事象事前確率事後確率
ドアAが当たりドアAが当たりかつ司会者がドアBを開く1/3x1/2 = 1/611/3
ドアAが当たりかつ司会者がドアCを開く1/3x1/2 = 1/6
ドアBが当たりドアBが当たりかつ司会者がドアCを開く1/3x1 = 1/311/3
ドアCが当たりドアCが当たりかつ司会者がドアBを開く1/3x1 = 1/311/3

表2.プレイヤーがドアAを選択した後に司会者がドアCを開いたという情報を取得した場合(ドアA,B,Cが当たりの事前確率がそれぞれ1/3、最初にプレイヤーが選択したドアが当たりのときに司会者が他2つのドアを開ける事前確率がそれぞれ1/2)
事象事前確率事後確率
ドアAが当たりドアAが当たりかつ司会者がドアBを開く1/3x1/2 = 1/61/21/3
ドアAが当たりかつ司会者がドアCを開く1/3x1/2 = 1/6
ドアBが当たりドアBが当たりかつ司会者がドアCを開く1/3x1 = 1/312/3
ドアCが当たりドアCが当たりかつ司会者がドアBを開く1/3x1 = 1/3

表3.事前確率を除く情報が無い場合(ドアA,B,Cが当たりの事前確率がそれぞれ6/11,4/11,1/11、最初にプレイヤーが選択したドアが当たりのときに司会者が他2つのドアを開ける事前確率がそれぞれ1/2)
事象事前確率事後確率
ドアAが当たりドアAが当たりかつ司会者がドアBを開く6/11x1/2 = 3/1166/11
ドアAが当たりかつ司会者がドアCを開く6/11x1/2 = 3/11
ドアBが当たりドアBが当たりかつ司会者がドアCを開く4/11x1 = 4/1144/11
ドアCが当たりドアCが当たりかつ司会者がドアBを開く1/11x1 = 1/1111/11

表4.プレイヤーがドアAを選択した後に司会者がドアCを開いたという情報を取得した場合(ドアA,B,Cが当たりの事前確率がそれぞれ6/11,4/11,1/11、最初にプレイヤーが選択したドアが当たりのときに司会者が他2つのドアを開ける事前確率がそれぞれ1/2)
事象事前確率事後確率
ドアAが当たりドアAが当たりかつ司会者がドアBを開く6/11x1/2 = 3/1133/7
ドアAが当たりかつ司会者がドアCを開く6/11x1/2 = 3/11
ドアBが当たりドアBが当たりかつ司会者がドアCを開く4/11x1 = 4/1144/7
ドアCが当たりドアCが当たりかつ司会者がドアBを開く1/11x1 = 1/11

補足:モンティホール問題の条件・解答・誤答・類題

抜き取ったカード

 4スート13枚ずつの52枚のトランプから、1枚抜き取って表を見ないで、さらに1枚をめくってカードを確認した時の最初のカードがダイヤである確率。めくったカードがダイヤのAである場合を考える。

表1.事前確率を除く情報が無い場合
事象事前確率事後確率
最初のカードがダイヤ最初のカードがダイヤのAめくるカードがダイヤの2~K1 x 1/52 x 1/51 x 121131/4
めくるカードがその他1 x 1/52 x 1/51 x 39
最初のカードがダイヤの2~KめくるカードがダイヤのA12 x 1/52 x 1/51 x 112
めくるカードがダイヤの2~K12 x 1/52 x 1/51 x 11
めくるカードがその他12 x 1/52 x 1/51 x 39
最初のカードがその他めくるカードがダイヤのA39 x 1/52 x 1/51 x 139393/4
めくるカードがダイヤの2~K39 x 1/52 x 1/51 x 12
めくるカードがその他39 x 1/52 x 1/51 x 38

表2.めくったカードがダイヤのAであるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
最初のカードがダイヤ最初のカードがダイヤのAめくるカードがダイヤの2~K1 x 1/52 x 1/51 x 121212/51
めくるカードがその他1 x 1/52 x 1/51 x 39
最初のカードがダイヤの2~KめくるカードがダイヤのA12 x 1/52 x 1/51 x 112
めくるカードがダイヤの2~K12 x 1/52 x 1/51 x 11
めくるカードがその他12 x 1/52 x 1/51 x 39
最初のカードがその他めくるカードがダイヤのA39 x 1/52 x 1/51 x 1393939/51
めくるカードがダイヤの2~K39 x 1/52 x 1/51 x 12
めくるカードがその他39 x 1/52 x 1/51 x 38

 4スート13枚ずつの52枚のトランプから、1枚抜き取って表を見ないで、さらにダイヤ1枚をめくって確認した時の最初のカードがダイヤである確率。めくったカードがダイヤのAである場合を考える。

表3.事前確率を除く情報が無い場合
事象事前確率事後確率
最初のカードがダイヤ最初のカードがダイヤのAめくるカードがダイヤの2~K1 x 1/52 x 1/12 x 121131/4
最初のカードがダイヤの2~KめくるカードがダイヤのA12 x 1/52 x 1/12 x 112
めくるカードがダイヤの2~K12 x 1/52 x 1/12 x 11
最初のカードがその他めくるカードがダイヤのA39 x 1/52 x 1/13 x 139393/4
めくるカードがダイヤの2~K39 x 1/52 x 1/13 x 12

表4.めくったカードがダイヤのAであるという情報を取得した場合
事象事前確率事後確率
最初のカードがダイヤ最初のカードがダイヤのAめくるカードがダイヤの2~K1 x 1/52 x 1/12 x 1211/4
最初のカードがダイヤの2~KめくるカードがダイヤのA12 x 1/52 x 1/12 x 11
めくるカードがダイヤの2~K12 x 1/52 x 1/12 x 11
最初のカードがその他めくるカードがダイヤのA39 x 1/52 x 1/13 x 1333/4
めくるカードがダイヤの2~K39 x 1/52 x 1/13 x 12

2つの封筒問題

 2つの封筒がありそれぞれの封筒に金額が記載された小切手が入っており、一方の封筒には他方の封筒の2倍の金額が記載されている。この条件における封筒の金額を知らないときと1つの封筒の金額を知ったときのそれぞれの封筒の金額の事後確率と期待値。確認される封筒の金額をM円とする。

表1.事前確率を除く情報が無い場合
事象事前確率事後確率期待値
封筒1がM円、封筒2が2M円1/411/4封筒1の期待値は9/8xM円、封筒2の期待値は9/8xM円
封筒1がM円、封筒2がM/2円1/411/4
封筒1が2M円、封筒2がM円1/411/4
封筒1がM/2円、封筒2がM円1/411/4

表2.封筒1の金額がM円という情報を取得した場合
事象事前確率事後確率期待値
封筒1がM円、封筒2が2M円1/411/2封筒1の期待値はM円、封筒2の期待値は5/4xM円
封筒1がM円、封筒2がM/2円1/411/2
封筒1が2M円、封筒2がM円1/4
封筒1がM/2円、封筒2がM円1/4

表3.封筒2の金額がM円という情報を取得した場合
事象事前確率事後確率期待値
封筒1がM円、封筒2が2M円1/4封筒1の期待値は5/4xM円、封筒2の期待値はM円
封筒1がM円、封筒2がM/2円1/4
封筒1が2M円、封筒2がM円1/411/2
封筒1がM/2円、封筒2がM円1/411/2

補足:2つの封筒問題の条件・解答

補足:条件付き確率

 事後確率における条件付き確率は事前確率を除く情報が有る場合と一致しており、事後確率を考えるときに事前確率を除く情報が無い場合を考える事はほぼ無いため事後確率は条件付き確率の一種として扱われる。
 事前確率における条件付き確率は事後確率における事前確率を除く情報が有る場合と一致している。以下に、事前確率での条件付き確率を解く方法を示す。
 事象A,B,Cがそれぞれ確率a,b,cで発生するものであり(a,b,c<1、a+b+c=1)、事象AまたはBが発生するという条件(事象Cが発生した時にはやり直すもの)での事象A,B,Cが発生する確率Pa,Pb,Pcを考えるものとする。(事後確率として情報による確率の更新を用いて解くと、ありえない事象Cを排除して、ありえる事象A,Bの事前確率a,bの比率によりa/(a+b),b/(a+b),0と求まる。)
 事象Cが発生した時にはやり直すものとすると、以下のような行列を用いた式で確率Pa,Pb,Pcを求めることができる。 \[ \begin{pmatrix} Pa & Pb & Pc \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b & c \end{pmatrix} \lim_{n \to \infty} \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ a & b & c \end{pmatrix} ^{n} \]  行列の積を計算すると、以下となる。 \[ \lim_{n \to \infty} \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ a & b & c \end{pmatrix} ^{n} = \lim_{n \to \infty} \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ a(1 + c + c^{2} + \ldots + c^{n-1}) & b(1 + c + c^{2} + \ldots + c^{n-1}) & c^{n} \end{pmatrix} \]  ここで、等比数列の和について解くと以下のようになる。 \[ \begin{align} \lim_{n \to \infty} (1 + c + c^{2} + \ldots + c^{n-1}) &= \frac{1}{1-c} (1-c) \lim_{n \to \infty} (1 + c + c^{2} + \ldots + c^{n-1}) \\ &= \frac{1}{1-c} \lim_{n \to \infty} ((1 + c + c^{2} + \ldots + c^{n-1}) - (c + c^{2} + \ldots + c^{n-1} + c^{n})) \\ &= \frac{1}{1-c} \lim_{n \to \infty} (1 - c^{n}) \\ &= \frac{1}{1-c} \end{align} \]  以上より、確率Pa,Pb,Pcは以下のように求まる。 \[ \begin{align} \begin{pmatrix} Pa & Pb & Pc \end{pmatrix} &= \begin{pmatrix} a & b & c \end{pmatrix} \lim_{n \to \infty} \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ a & b & c \end{pmatrix} ^{n} \\ &= \begin{pmatrix} a & b & c \end{pmatrix} \begin{pmatrix} 1 & 0 & 0 \\ 0 & 1 & 0 \\ \frac{a}{1-c} & \frac{b}{1-c} & 0 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} a+a\frac{c}{1-c} & b+b\frac{c}{1-c} & 0 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} a\frac{1}{1-c} & b\frac{1}{1-c} & 0 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} \frac{a}{a+b} & \frac{b}{a+b} & 0 \end{pmatrix} \end{align} \]  例として、2枚のコインを投げるときの表裏の組み合わせにおいて、コインが少なくとも1枚は表である(コインが2枚とも裏ならばやり直す)という条件付きのときコインが2枚とも表となる確率は1/3となる。